第二章 指導について
教育センターCAD 講師心得 10ヶ条
一、円滑に授業を進めるために、5〜10分前には家に着き、生徒・保護者様に明るく元気に目を見て挨拶する。
二、わかりやすい説明をするために、授業時間の¼は予習して授業に望む。
三、生徒のやる気を引き出すために、コミュニケーションをしっかりと取り、しっかりと褒める。
四、生徒が予習・復習しやすいように、アドバイスノート、まとめノート、授業用ノート、宿題用ノート、(単語暗記用ノート)を使い分ける
五、授業外の時間も管理するために、日割りの具体的な学習計画を生徒と相談しながら毎週作る。
六、生徒の定着度をはかるために、20点満点目安で、単語・文法・公式・計算・一問一答、などの小テストを行う。
七、授業に最大限の効果が出るように、生徒が問題を解いているときは、間違いポイントや、文法・公式をノートに整理する。
八、生徒の得手、不得手を把握するために、生徒をよく見て、何故その答えになったかを随時説明させる。
九、生徒に気付きを与えるために、答えは言わずヒント・具体例を出す。
十、成績をよりあげるために、家庭と教務と三者でしっかり協力し、報告連絡相談をしながら進める。
詳細は当然のことなので、割愛しますが、常に心がけてください。
人間は決して合理的な考えだけで物事を判断する生き物ではありません。
いくら良い学習指導が出来ても、上記のようなマナーが理解できていなければ、保護者•生徒から信頼を勝ち取ることは出来ません。
お互いに良い関係が気付けるように工夫してください。
指導について2、コーチングの基本
コーチングとは、「コーチングを受ける人(クライアント)を目標達成に導くこと」です。
以下、コーチングの基本について触れていきたいと思います。
①モチベーシヨン
まずはモチベーシヨンです。
これがなければ学習効果は決して上がらないため、自ら学ぶ、自ら問題を解決する、という姿勢を作り出さなければなりません。
そうはいっても相手は子供です。
こちらからモチベーションが上がるような前向きな声かけや励ましの言葉、叱咤激励を行っていきましょう。
子どものモチベーションを上げるのに一番大切なのは「意味付け」と「動機付け」です。
全ての行動に意味を与えるようにしましょう、無意味な行動はやりたくないのが人間の本質です。
例えば「テストでいい点を取るために単語を書きとって覚えよう」「計算ミスをなくすために計算の問題を解こう」
動機は不純なものでも構いません、動く理由がないと人間は動かないです。
例えば「〇〇高校に行くために頑張って勉強しよう」「テストでいい点とる人ってかっこいいよね、好きな人にすきになってもらえるかも」など・・・・・
②コミュニケーション
言葉だけじゃなく、表情や動作、態度なども全てコミュニケーションの手段だと認識してください。
自分の主張だけでなく、生徒や保護者の意見を聞き、信頼を勝ちとってください。
信頼できる人のためなら頑張れる、そんな経験先生にもありませんか??
「先生のためにも勉強頑張ろう」そう生徒に思われるような先生になってください。
③観察
すべての人間に個性があり、理解が早い人も遅い人もいます、目から覚える人も耳から覚える人もいます。同じ課題を与えても結果は異なります。
しかし、学校や塾のカリキュラムはその点をある程度無視し、画一化せざるをえません。
生徒専属のコーチとして、個人の能力をそれぞれ伸ばすためには、生徒に対する観察、把握、分析を行いましょう。
④適切な課題
観察に基づき、問題点や身につけさせたいスキルを抽出し、現状のスキルを判断し、難しすぎず簡単すぎない課題を考えて、実施しましょう。
適切な課題をこなすことで生徒は必ず成長していきます。
逆に生徒が成長しない場合は、課題が不適切な場合があります。
最終的には自ら考え行動し、問題解決をする力をつけさせることがコーチングのゴールです。
これらの点を踏まえて、より実践的なポイントを押さえていきましよう。
指導について3指導上の注意点
①精神的なサポート
- 前提として生徒は勉強がうまくいかないから家庭教師を頼んでいます。
- 決して「こんなことも出来ないの?」という生徒•保護者を失望させる発言や振る舞いは行わないでください。
- 頑張ったら褒める、サボったら叱ってください。(ただし仲良くなるまでは叱る
ことは避けること。人格否定するのではなく、何が間違っていて、今後どうすればいいかを具体的に示しながら冷静に叱ること。また叱ったあとに保護者にフォローを入れること。)
- 勉強面以外でも趣味や興味のあることの共通点を見つけ、仲良くなってください。
- 小さな約束でも必ず守り、信頼関係を築いてください。
- 「わからない」や「できない」、「自信がない」などのネガティブな発言は禁止です。
※判断に困る質問をされたときでも、まずは自分なりの見解を示し、「僕はこう思いますが、念のために教務とも相談してみますね。また次回話し合いましよう。」という風に答え、後程教務に相談してください。
②どこがわからないのか把握
- ほとんどの生徒は「どこがわからないのかわからない」状態です。
- 受身ではなく、積極的に学習状況を確認してください。
- テストやテキスト、ノートに本人のこれまでのやり方の履歴が残っています。
- 塾や学校から与えられているテキストやノートを把握し、使い方を決定しましよう。
- 特に模試は「成績表」を見るだけでなく、 「問題」や「正誤表」を確認し、具体的な問題点を把握しましょう。
③指導の効率化
- 授業中に問題を解かせるのは非効率です。
- 極力事前に問題を解かせておいて、授業中は解答•解説の時間に特化する体制を作ってください。
- 授業中も時間管理を行い、効率的な時間配分を身体で覚えさせるようにしてください。
- 次回の指導で使うテキストの指示や指導の準備は毎回怠らないでください。
④テキストについて
テキストは個別に用意してください。テキストの目安は
1、平均点より20点以上低い生徒⇒学校の教科書とワークの解説を繰り返す
2、平均点よりちょっと低い生徒⇒教科書ワーク(書店にて)
3、平均点より高い生徒または受験生⇒問題演習
Googleのドライブにて何百冊かの参考書、問題集を共有します。
適時使ってください。携帯、タブレットでも見れますが、生徒に渡す際は大学でも印刷できます。
但し、お金をもらう、他の人にデータのコピーを渡す、事は禁止です(著作権の侵害)
もし、必要なテキストがあったら、お母様と教務に相談して購入してください。
⑤学習計面の作成
効率的な指導を行うためには授業時間外で何をやってもらうかが重要です。
※詳細は次の「4学習計画」を参照。
指導について4、学習計画
①目標設定
- 目標が決まらないと学習の方向は定まらないので、まずは志望校、得点(目標)を確認しましよう。
- 明確な志望校(目標)がなければ、仮の志望校(目標)を決めましよう。
- 志望校についての情報を常に発信し、動機付けをしていきましよう。
あの高校は〇〇部が強い、教え子が行ったけど楽しそう。
※生徒の志望校については自分で調べ、必要に応じて教務にアドバイスを求めてください。
- 志望校は現在の偏差値や点数が足りていなくても諦めさせないでください。
- ただし、先生の頭の中では本命校(現在の偏差値と同等の学校)、安全校(現在の偏差値より5程度低い学校)、チャレンジ校(現在の偏差値より5程度高い学校)と志望校を分別しておいてください。
- 短期目標は生徒の今の力より20%程度高い設定にしてください。
例)公開テストで50点の子
次回のテストでは60点を目指す。
②現状の把握
- 多くの生徒は塾や部活、習い事によって、制限されたスケジュールの中で学習を進めていかなければなりませんので、まずは生徒のスケジュールを把握し、使える時間を見つけ出しましよう。
- 大きいテストの結果(定期テストや模試)は毎回把握してください。(報告書にも記載すること)
- テストは結果だけではなく、問題や正誤表も確認し、全体の正答率が高い問題での失点を確認しましよう。
- 全体の正答率が高い問題(基礎•標準)で失点したところが本人の弱点ですので、徹底的に補強しましょう
③計面表のポイント
計画表はスケジュール帳に一週間ごとに、生徒と相談しながら、記入してください。
- 「いつ、どこを、どのくらいやるか」ということを明確にしてあげましよう。
- 学習計画には盛り込む内容は「宿題の配分付け(塾•学校)」と「教えたところの復習」です。
- 宿題の効率化を図り、浮いた時間で復習や苦手科目の強化を図ってください。
- お母さんとも共有し、協力を仰ぎましょう。
お母さんには「先生の言うことはきちんと聞いてね」とだけ言ってもらいます。
必ず毎週見直しを図り、計画の精度を上げていきましょう。
計画表は必ず体験授業のときから作成しましよう。
(最初はざっくりとしたものでも構いません)
◎学習計画表作成のポイント
①第一志望校を明記
②基礎トレは毎日(特に漢字、英単語)
③学校生活を含めた日程を把握
④塾のスケジュールを把握
(授業中の注意点も記載)
⑤復習は可能な限り翌日までに
(優先順位や捨て問題も記載)
⑥指導は解答・解説中心
(ノート、時間の使い方も教える)
⑦スケジュールには必ずゆとりを
⑧受験生は過去問も計画的に
⑨暗記物は寝る3 0分前が効果的
⑩今月の達成目標を明記
⑪保護者との連携も大切
⑫テレビや食事の時間は入れても、入れなくても0K
最低でもこれらの点を押さえ、生徒と保護者とコミュニケ一ションをとりながら、使いやすい学習計画表にしましよう。
また、定期テスト対策は2週間前から始めてください。つまり、二週間前にはテスト範囲を終わらせるように計画を立ててください。
指導について5、コミュニケーションについて
「2 コーチングの基本①」で述べたとおり、指導を行う上でコミュニケーションは非常に重要です。
生徒との信頼関係ができあがるまでは「3指導上のポイント①」で述べた通り、怒ることを避け、否定的な言葉を肯定的な言葉に変換してください。また、指示や注意をする際には感情的で抽象的な指示を、冷静で具体的な指示に変換してください。以下はその例ですので、参考にしてください。
「怒る」と「叱る」は全く違うものです
「自分がイライラして声を荒らげる」のは怒る
「きちんと理論的に相手を納得させて、自分が悪いことをしていると気づかせる」というのが叱る
叱ることはあっても怒ることだけは絶対にしないでください、信頼をなくします。
指導について6 「先延ばし癖」のあるお子さんについて
コミュニケーションを十分にとり、計画表をしっかりと作っても先延ばしにしてしまい、なかなかうまく実行できないお子さんもいます。この場合、以下の6段階のステップによって“先延ばしの習慣”を“すぐやる習慣”へ変えてあげてください。
考えが変われば行動が変わり、行動が変われば習慣が変わり、習慣変われば人格が変わり、先延ばしの習慣は無くなります。
①前提は自分に原因があることを否定する考え方
「先延ばしタイプ」のお子さんの前提は「自分に原因があることを否定している」という点です。先延ばしの原因を他人や環境のせいにして、考えること自体を拒否しています。この考え方を変えない限り根本的な解決はできません。
②自分に原因があることを認識させる
そうはいっても考え方を頭から否定しても頑なになるだけです。ですから先延ばしにしたくなる心理を理解した上で、自分に原因があることを認識させてください。
先延ばしの主な原因はニ点です。
一点目は時間管理です。時間管理が下手で「どこから手をつけていいかわからない」という状態になってしまうわけです。
ニ点目は初見のことや苦手なことへの不安です。この不安を避けたいためにやるべきことを後回しにしてしまうというわけです。さらには、先延ばしたことへの罪悪感が生じ、現実逃避をはじめ、負のスパイラルに陥ってしまいます。
似たようなことは誰もが一度は経験があるでしょう。ですから先延ばしの心理に共感した上で、自分に原因があることに気づかせてあげてください。
③先延ばしのデメリットを伝える
さて、先延ばしをしてしまうお子さんは先延ばしのデメリットから目を背けています。
しかし、受験や勉強には必ず期限があるため、この先延ばしのツケは近い将来必ず払わされることになります。このデメリットをお子さんの状況に合わせて具体的に伝えてあげてください。
④自分を変えることへの不安を理解する
先延ばしのデメリットが伝わったら、次は習慣を変えましよう。
先延ばしは悪い習慣ですが、悪い習慣とはいえ人は慣れてしまいます。そして習慣を変えることには少なからずストレスや不安はあります。まずはこの気持ちを理解し、不安を和らげるような言葉をかけてあげてください。
⑤やるべきことを簡潔•明確にする
不安を和らげた後は、具体的な行動指針を示しましよう。
やるべきことを前述の学習計画表に簡潔かつ明確に記載し、すぐに行動しやすい環境を作り上げてください。
⑥わずかな失敗を失敗と捉えない
行動を習慣に変えていく過程で注意しないといけないことは、わずかな失敗を失敗と捉えず、完璧主義者にならないことです。計画をたった一日守れなかっただけで全て失敗したと捉えてしまうと、なし崩し的に習慣化は途絶えてしまいます。
この程度の失敗は以前の状態と比べると大きな進歩です。寛大に捉え、“すぐやる習慣”を再開してください